忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ぶらぶらデート

 からっと乾いた秋晴れの続いた日には、日向の匂いが充満する。
 空気は程よく冷たくて、動き回るには最適だ。日に日に日照時間が短くなって、朝は遅く、夜は早く。秋の深まりを感じながら、次第に冬へと移ろっていく。
「すげー! めっちゃ落ち葉いっぱいじゃん!」
「落葉樹ばっかりだったんですね、この公園」
 ランニング用のコース路や、散策用の遊歩道、芝生が敷き詰められた緩やかな丘、木製の遊具が並ぶアスレチック広場。大規模な公園の散策路を歩いていた福田と蒼樹は、土が一切見えないほどの落ち葉の量に感嘆の声をあげた。
 黄色や赤、オレンジといった紅葉した木々の葉がはらはらと空中を舞い、落ちていく。
 木々についている葉のほうが少なく、紅葉シーズンとしては見頃をとうに過ぎたものの、地面を覆ういろとりどりの落ち葉もまた、見ごたえのある風景だ。
「ダーイブっ!」
「福田さん、洋服汚れますよ」
「こまけーことはいいんだよっ! すっげーふかふか!」
 福田は地面にごろりと寝転がる。大の字になって、落ち葉の中に埋もれるようだった。落ち葉は乾燥していて、とても軽い。福田がそこに寝転がるとぱりぱりと音をたてた。木々に葉がなくなったおかげで、陽光がサンサンと降り注いでおり、ずいぶんと暖かだった。
「蒼樹嬢もこいよ」
「やですよ、汚れますって」
「けち」
 呆れた、と言わんばかりに、蒼樹は落ち葉の上に寝転がる福田を、足元に立ったまま、子供の用に振舞う福田を見ていた。
「ほら、立って。行きますよ」
「やだ」
「やだって……子供じゃないんだから」
 福田は軽く頬を膨らまし、ますます幼稚な行動にでるものだから、蒼樹は目を回し、ふぅとため息をついた。
 こんな甘えたな福田の姿を、漫画家仲間や福田のアシスタント達が知ったら、仰天するだろう。たまに出てくる福田のこういう所作は、たぶん、わざとだろう。蒼樹の困った様子を見て、楽しんでいるに違いない。
 やれやれと首を振った蒼樹は、福田の眼前に開いた手のひらを差し出した。
 この手につかまって、立ち上がれと言うのだ。福田は渋々といった様子で蒼樹の手に掴まった。
「うわっ」
 けれど、引っ張られたのは福田のほうではなく、蒼樹のほうだった。
 予想もしていなかったために踏ん張りきれず、蒼樹はそのまま福田の上に覆いかぶさるように倒れてしまった。
 勢いで、盛大に落ち葉が舞った。
「もー何するんですかあ! けがしたらどうするんですか!」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと受け止めてやっから」
 いたずら成功という顔で、福田がにやりと笑った。しっかり腰をホールドされていることに気づいて、蒼樹は途端に顔を赤くした。
 なんということだ、恥ずかしい。ここは部屋ではなくて、公共の公園だ。
「お、下してくださいっ!」
「へいへい」
 福田はどこ吹く風と言わんばかりに、適当な返事をしたものの、力を緩め拘束を解いた。蒼樹は慌てて福田の体の上からどいたが、福田が立ち上がる気配は見せなかった。仕方なく蒼樹は福田の隣に腰を下ろす。
 昼食を軽めにファーストフードで済ませて、ぶらりぶらりと公園に寄った。腹ごなしをしたら、きっとカフェにでも入って休憩したら、またぶらりぶらりと駅前の大きな書店に入って物色したあと、電車に乗って帰宅する。
 とてもスローライフなデートプラン。
 時にはこれぐらいゆっくりとした休日もいいものだ。柔らかな秋の陽光が木々の隙間から降り注いでいた。
「暖かいですね」
「だなー……眠くなりそう」
 まるでブランケットでも被って、ぬくぬくと布団の中で丸まっているような、そんな心地よさがある。このまま会話が徐々に少なくなっていったら、本当に寝てしまうかもしれない。隣にいるお互いの気配を伺いながら、この温もりを享受する。足下の落ち葉を一つかみ掴み、また放り投げる。
「こんだけ落ち葉あったら、これで焼き芋やったらうまそう」
「公共の公園でそんなことしちゃだめなんですよ」
「わかってるよ、夢がねーなー。メルヘンリストなくせに!」
 福田は遊んでいた枯れ葉を蒼樹に投げつけた。何をするんですか、と蒼樹も応酬して福田に枯れ葉を投げつける。
「メルヘンリストってなんですか! そんな言葉はありませんよ」
「いつからリアリストになったわけ」
「その反意語でしたら、アイディアリストっていうんでうよ」
「いやーなんか違うわ。ドリーマーって感じじゃね? 蒼樹嬢の場合」
「福田さんに言われたくないんですよ! 福田さんだって大抵ドリーマーな上に、メルヘンリストなくせに!」
「なんだと!」
「なんですか!」
 投げつけたら、投げ返して、さらにまた投げ返す。二人は頭から枯れ葉まみれになっていた。公園の散歩路の一角だ。公園に来ている他の一般人も側を通っているのだが、二人は周りが見えなくなっていた。お構いなしに枯れ葉を投げ合っている。傍から見れば、じゃれあっているようにしか見えなかった。
 そんな二人を諌めるメロディーが、どこからともなく聞こえてくる。昔懐かしいメロディー。時代は進んでも、いつだって変わらない、あのメロディーと歌声が。
──焼き芋〜♪ 石焼き芋〜♪
 二人ともようやく手を止め、我に返る。
「何やってんだ、俺ら」
 自分たちの行動に呆れて、福田自身の姿を見返し苦笑した。
「ふふっ、葉っぱまみれですよ」
「蒼樹嬢こそな」
 体についた枯れ葉を払い落とし、蒼樹の手を取って立ち上がった。
「石焼き芋買って帰るか」
「そうですね」

拍手

PR

About

sunday morning

http://3daymorning.3rin.net/
iwanoriojisan-webtool★yahoo.co.jp